『ひこばえ 上・下』を読んだ

父と過ごした記憶はほぼない、そして父は既に亡くなっている、このような状態から父を巡る物語が始まる。
父の記憶はないし、知っている姉は父を嫌悪しているし、自分は自分で仕事や家族にいろいろな変化が生まれる、そんな中でどうやってこのほぼ他人のような認識の父への思いを埋められるのか気になりながら読んだけど、さすがに人物描写を描くのがうまいだけあって、父や父に関係する人たちの言葉や動きを通じて、もう亡くなって全く動きのない父の輪郭や人となり、そして父への思いが浮かび上がってくる。
上下巻で700ページ近くあり、読む前に躊躇していて、買ってからしばらく本棚に寝かせていたけど、読むとなったら夢中になり一気に読んだ、読めた。そして自分の父に会いたくなった。さらには実家の家族や義理の家族、親戚にも会いたくなった。自分が今こうして生きていられるのは家族や様々の人のおかげで、ひこばえとして生きているのかもしれないと思った。そして自分も誰かのひこばえになれたら。


興奮する熱さではなく、トクトクと心が温まり続ける熱さが込められている非常に良い作品だった。


ひこばえ (上)

ひこばえ (上)

  • 作者:重松 清
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 単行本


ひこばえ (下)

ひこばえ (下)

  • 作者:重松 清
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 単行本