いいねぇ。12の話のどれも読み終わった後そう言ってしまった。いいなぁ、じゃなく、いいねぇ。自分の過去と重ねてしまう話の数々。
切なさと温かさがまじりあった話。フィクションの中のそれらを感じたとき、自分が今までにそういう気持ちになったときのことを思い出す。フィクションを読み現実の過去を思い出しちょっとチクッとくる。
「さらば愛しき牛丼」が一番よかった。吉野家の牛丼の本当の食べ方と味が書いてある。そうそう、そうなんだよ、と自分の過去を思い出しその記憶にしばらく浸った。ただ食べるんじゃない、食べる前に何したかが重要だし、何したかは考えてするものじゃない。学生時代あの味を体験することができて本当によかったと思う。
重松スパイスたっぷり。やっぱりはっきりとした答えは示さないのだけれど、決して突き放さない優しさが、ある。
「みんな、どこに行ったのだろう」という帯の言葉、素晴らしい。
読んでよかった。地味だけど広がって欲しい一冊。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: 単行本
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