『蠕動で渉れ、汚泥の川を』を読んだ

西村賢太私小説なので、もちろん北町貫多モノ。
いやあ、相変わらずひどい。長編なのでその横暴さ、ひどさ、もっと言ってしまえば糞っぷりがより多岐に渡って書かれている。
ローンウルフ気取りなのに根は小心者。その日暮らしを脱出したいのに金子を手にしたらすぐに酒に女にと散財する。本当にどうしようもない生き方をしていて、人との関わりも下手なのに、「僕はお前らみたいなのとは違うんだ」と他者を蔑んでいる。そんな、「無茶苦茶な生き方が面白いけど現実世界で近くには絶対にいてほしくない人No.1」の北町貫多が今回もしっかりと小説の中で蠢いている。
最後の部分は、それまでのドロドロと溜まったものが一気に吹き出して爆発力が素晴らしいんだけど、情けなさが混じっていて、もう貫多が愛しくなる。どうしようもねえなこいつ、でもまた次が読みたい。

蠕動で渉れ、汚泥の川を

蠕動で渉れ、汚泥の川を