『OUT』を読んだ

亭主を殺したのに解体作業に加わらなかったため一番罪の意識がないように見える弥生。その上死体解体をした雅子たちに憎悪すら抱く恐ろしさ。
見栄を張って生きて借金を重ねていく邦子。コンプレックスがあることを見栄を塗ることで忘れていくかのような生き方。お金のためなら仲間ですら売る。
介護に娘の将来にと自分のこと以外でも多忙、そんな星の下に生まれたんだよと言って目の前ほんの少しだけを見つめて生活に必死なヨシエ。それゆえ地獄に堕ちるのを覚悟して手を染めていく。
そして雅子。これだけの長編なのに心の深い部分が書かれておらず、他の3人に比べて結局何がそこまで雅子にさせたのかわからなかった。そしてそれが不気味だった。なぜ他人の犯罪隠蔽のために死体解体をしたのか。なぜ普通の主婦にそんなことができてさらに堕ちていくのか。
バレないだろうと思っていた事件が明るみに出て4人とそれ以外の関係者の歯車が狂っていく。その過程が緻密かつジェットコースターのような展開で、恐ろしさを感じたままクライマックスへと向かっていく。
1997年刊行の作品だけど、2010年の今読むと現実が小説に追いついている。格差、借金、落ちたら上がれない社会、普通の人が犯罪を起こす、現実でここまで小説並のことが起こっているのだと改めて感じ、より恐ろしさを感じた。逆に1997年にここまで書けていることに驚いた。

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)

OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)

OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)