ユリコ、ユリコの姉、ミツル、そして和恵。同じ高校に入った別々の生き物。それがやがて怪物になる。それぞれの視点で書かれた日記や手記があるので、誰が本当に本当のことを言っているのかわからない。そしてそれが段々不気味に感じてくる。
下巻になると殺人の容疑で逮捕された男の上申書も入り、不気味さに底知れぬ深い暗い恐ろしさが加わって読んでいてゾッとしてくる。恐怖の描写はないのに恐怖がすぐそばで感じられる。
極めつけは和恵の日記。自分が狂ってきている、狂っていることに気付かない。周りは理解していない何もわかっていないバカばかりだと周りの方がおかしいと思い込んでいる。現実から目をそらしているわけでもなく嫌々娼婦の世界で生きているわけではない、昼はOL夜は娼婦という自分に心から酔っている。しかし現実はどんどん離れていく。それに気付かない和恵。もう完全に狂っているのに自分はまともだと思って書いている日記を読み、もはや何がどうなって、一体何が普通なのか正しいのかわからなくなってきた。
そして最後にユリコの姉の「わたし」にも訪れるグロテスクな闇。
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