『気をつけ、礼。』を読んだ

先生視点もあるし、生徒の視点もある「教師」がテーマの6つの短編。
ロックとロールのロールの大切さを「キープ・オン・ローリング、なんよ」「止まらん、いうことよ」「終わらん、いうことよ」「要するに、生き抜く、いうことよ」と教えてくれた白髪のニール。体だけじゃなく心が泣いている子どもを学校の中で誰よりも見てきた保健室の先生。絵を描き続けコンクールに応募し続けたマティスとそれを中学の頃冷たい目で見ていた生徒。教え子を嫌い「にんじん」と心の中で名付け、わかっているのに無視することをやめられなかった先生。他の先生が気を遣って直接的に言わなかった、でも生徒にとってはそれが嫌だったことに対し、直球でそれを言いいつも「気をつけ、礼。」を教えてくれたヤスジ。まだ社会に出る前の生徒が未完成であるのはある意味当然だが、社会に出て多くのことを見てきた先生もまた未完成であり生徒から教わることが多くあるのだと思った。
「泣くな赤鬼」の元生徒のゴルゴがラストに言った言葉と、その前後の赤鬼先生とのやりとりが、たまらなく胸にしみて思わず泣きそうになった。生徒にとって先生はいつまでも先生であり、先生にとって生徒はたとえ学校を離れても生徒であるということを、字面の言葉ではなく心がうなずく言葉で教えてくれた。
そろそろ長編のがっつりとした重松作品が読みたい。今作も含めた今までの重松節からまた一つ進んだ作品が読みたい。

気をつけ、礼。

気をつけ、礼。