『この世の果て』を読んだ

野島作品は昔からよくテレビで見ていた。当時まだ小学生だった自分にとって『未成年』や『人間・失格』などはかなり衝撃的な内容で、今でも覚えている。
『この世の果て』は見たことがなかった。小説で文庫化されているのを知り購入。
すさまじい作品だった。ドラマから小説にしているせいもあり読みやすい書き方なのもあるが、素早い場面展開、印象的な科白の数々、メインのまりあと士郎以外の人物まで感情移入できるような設定、読み始めたら止まらない、読んでいる者をひきつける力があった。
出会った頃が一番幸せだったようにさえ思わせる中盤のすれ違いと悲劇の連続に、なぜわかりあえないんだというジレンマが重なり終盤にかけてさらに急速になっていく。話が広がり極限までいったところでの最終章のまとまり。しかしそこからさらにもう一つ真のクライマックスが待っている。
夢中になって読んだ。フィクションの雰囲気に溢れているのに現実を思わせる。悲劇と人間の渇望があった。そしてその高まりが行き着く先に題名の「この世の果て」があった。読後本当にこの題名が合っていると感じた。「面白い」という表現がこの小説には不適当かもしれないが、それでも文句なしに面白かった。


世界が滅びて、たった一艘の船があります。自分と残りの動物の中からひとつだけ選んで逃げ出すことができます。馬と羊と虎と孔雀、あなたはどれを選びますか?

この世の果て (幻冬舎文庫)

この世の果て (幻冬舎文庫)