『送り火』を読んだ

辛さを含んだあたたかさ。優しい。
私鉄沿線の富士見線の周りにいる人たちの9つの話。連作短編集ではない。
疲れ気味の毎日で一つずつ読んでいったが、どの話も心にしみて疲れが抜けていくような感じだった。
幽霊が出たりと現実離れした話もあるが、内容は現実を鋭く見つめたもの。職探し、公園デビュー、いじめ、親の介護など今日も日本のどこかで起きていることが書かれている。それらのことを丁寧に、だけどごまかさずに見つめ光を灯して終わる。
送り火」「もういくつ寝ると」では泣きそうになった。どちらも今の自分とは重ならない境遇の人の話だが、まるで自分がその人物になったかのように感情が伝わってきた。
「よーそろ」に出てくるムラさんの世界放浪日記のHPが本当にあったらいじめで自殺する子どもが減ると思う。ないのだろうか。今いじめにあっている子はこれを読めばきっと人生を諦めることはないと思う。
いい小説に出会えた。

送り火 (文春文庫)

送り火 (文春文庫)