『門』を読んだ

三四郎、それから、に続く三部作の終篇。
三四郎やそれからにあったような劇的な展開や突如強く湧き上がる感情といったものはなく、平凡な、普通な日々が描かれている。しかしそれがつまらないわけではなく、ともすれば自分の人生もこのようになしくずしに平凡が積み上がっていくのではないか、と思わせるある種の恐ろしさがある。読んでいる時は、なんだろうこの感じと違和感にも満たない感情が湧くが、それは読み終わってその僅かな違和感の出処を探しているうちに大きくなってくる。
久しぶりに昔の本を読んでいるけれど、昔の本も面白いものは面白い。結局今も昔も人は悩み、解決できず、いつも堕落の落とし穴に引っかかっている。

門 (新潮文庫)

門 (新潮文庫)