素晴らしい。文庫4冊という長さだったが、読み終わってみるとそれくらいないとこの作品は完成できなかったと思う。4冊分読んでいる間に読者にも暗黒館と同じように時が降り積もってくる。
1は導入、2は発生、3は過去、4が解決という印象だった。
何度も対象が変わっていく”視点”、「中也」と呼ばれる少年、「ダリアの祝福」の謎、今回は全くもってストーリーを語れない江南(実は別のほうできちんと全てを語っているのだが)と、疑問と違和感に包まれたまま進む物語を読んでいるうちに完全にその世界に染まってしまった。
18年前の事件と今回の事件、浦登家の家系の真実、そして中也の正体、視点の正体がわかった時最高のカタルシスに包まれる。この瞬間、暗黒館とそれに魅せられ憑かれた人たちの世界が開けられる。ただし、闇は闇のままということもわかる。解決編に1冊使わないといけないほどの練りに練られた構想だった。
素晴らしい。館シリーズの集大成という言葉に偽りはないと思う。最後だと思ったら始まりだった。
- 作者: 綾辻行人
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