『歪んだ忌日』を読んだ

西村賢太最新刊。今回も北町貫多節炸裂!
いつもの若い頃や秋恵同棲時期もあるが、今回は芥川賞(A賞)受賞後の話もあるから興味深い。いや、もちろん私小説なのでこれは西村賢太じゃなく北町貫多の話なのだけれど。
私小説だから同じ人物の話になるが、全然マンネリになっていない。
「形影相弔」と「歪んだ忌日」は最近の話で、貫太が葛藤したり悩んでいたりする姿があり、そのもがく様に強烈な人間臭さを感じて何か勇気をもらえるような感じがあった。
毎回毎回人間という井戸の、一番底の底のさらに窪んだ部分にある一番汚いけれどまっさらな部分を見せてくれる貫多の姿には爽快感さえ感じる。
きったねえんだけれど、それを言っちゃあおしまいなんだけど、普通はそんなこと言わないんだけれど・・・という生きていく中でどこかで心にできたうまく生きていくために必要な壁、それを貫多は簡単に飛び越えちゃう。その姿が常に壁を意識して、なんなら窮屈に感じながら生きている者にとってはたまらなく快感。ねっとりとした人間臭さ、爽快。
「―まだ、書ける。師への思いを失くさぬ限り、需要があろうとなかろうと、まだ書ける。引き続きの四面楚歌の中でも、自分はまだまだ書いてみせるとの(以下略)」という貫多の言葉を信じて、また新しい作品が出ることを期待する。
それにしてもタイトルに「膣の復讐」なんて、これまた強烈すぎる。

歪んだ忌日

歪んだ忌日