『お父さんのバックドロップ』を見た

 昨日大きなヘマをした。自分だけの問題で収まらず、他の人にも迷惑をかけてしまった。最近うまくいかないことが多くよく凹む。小説を読んだり映画を見たりして気持ちを切り替えようとしているが、なかなかうまくいかない。テキトー主義なのによく沈んでしまう。
 そんな気分だったので早めに帰宅。と、その前にTSUTAYAに行った。何か見て気分を紛らわせたかった。TSUTAYAに行くと、前から見たかった『お父さんのバックドロップ』があった。1本しか入っていなくて、行くたびにレンタル中だった。それが昨日はあった。これはもう「今見ろ!」と言っているのだろうと思っておかず抜きにして即借り。
 家に帰ってご飯かっ食らって部屋の電気消して上映開始。
 泣いた。泣いてしまった。心の奥から湧き上がる感情が止まらなかった。プロレスファンだったから5割増しだったのだろう。
 父親の牛之助と息子の一雄がメインだが、どちらに感情移入しても面白く見られると思う。私は牛之助側で見た。牛之助の気持ちも一雄の気持ちもよくわかる。だからお互いどんどん溝が深まってしまう。溝を埋める手段はやはり父が一番好きで息子が一番嫌いなもの。
 最初の何気ないことが最後につながったりと、主となる話以外に細かいところがかなり凝っていて、力のいれようが伝わってくる。
 牛之助の試合前のマイクは最高にかっこいい。あの時点でうるっときた。そして試合中に自然発生する「牛之助コール」。誰もが牛之助を応援したくなる、きっとどこかで自分に重ねて。
 牛之助以外の人物も濃く魅力的に描かれている。飲み屋で客にからかわれ暴れる松山。頭突き、ドロップキックで相手をふっとばし、体を、声を震わせて叫ぶ松山
 「お前に何がわかんだ、プロレスの何がわかんだ!言ってみろ!」
 普段は温厚な松山が止められないほどキレた。絶対に譲れないものがある。それを他人に笑われたくない。松山の言葉の中の「プロレス」を自分の一番好きなもの・譲れないものに言い換えればわかると思う。
 見終わればすっきりする映画。エンディングのスネオヘアーの曲もラストにぴったりでよかった。
 テーマや展開としてはそんなに目新しいものではないかもしれない。タイトルで全てがわかってしまうかもしれない。しかし、それでも感動する。泣く。プロレスに興味がない人が見ても十分楽しめる作品だと思う。プロレスファンであるということを抜きにしても非常に面白い作品だった。
 映画が全て終わって一瞬の暗い画面からまた明るくなり、完全に終わったところで部屋の電気をつけたら、私の視界は完全に変わっていた。暗から明、この感覚は映画館の大きなスクリーンで味わいたかった。
 この映画は落ち込んでいる時に見るのが一番いいと思う。同情や共感といった予想された気持ちを飛び越えて胸の中に入ってくる。昨日書いた『父、帰る』と同じくこれまたレンタル数が少ないのがもったいない。
 この映画を見たおかげで今日は見事に気持ちを切り替えて取り組めた。誰にでも悩みや不安はあると思うが、実はもっと自信を持って前を向いていいのではないか、と思わせてくれる作品だった。


 本気の人を誰も笑うことなどできない。