「今は今しかないから」

一人酒で潰れた。一人酒が一番いいと最近思える。自分が一番落ち着ける自分の部屋で自分が好きな物を食べながら自分が好きなお酒を好きなだけ飲める。わがままにとって最高の自分勝手ができる空間と時間だ。
空き缶と空き瓶でやっちまった感はわかるけど何時まで起きていたかは覚えていない。ただ、最後はスパルタンXをリピートでかけながら『三沢光晴外伝 完結編』を読んでぼろぼろ泣いていたはず。
素晴らしい一冊。僕の青春時代にいつも励まされた三沢光晴がいる。自分なら絶対にできないと思うような満身創痍の中でのチャンピオンカーニバル優勝後のインタビューで「今は今しかないから」という一言で表した三沢光晴。超満員の東京ドームでベイダーをエルボーで撃破した後の勝利者インタビューで自分の勝利よりも「これだけのお客さんが来てくれたことが嬉しい」と言った三沢光晴。本当にプロレスを愛しプロレスに殉じたんだと思う。受験勉強が始まった時期に自分の進路よりも気になった三沢光晴の全日退団。暑い夏に受験勉強よりも気になったノア旗揚げ。熱くなった時にいつも三沢光晴がいた。この人みたいになりたいといつも思っていた。だけどこの人にはなれないな、と試合を見て思っていた。三沢光晴桑田佳祐がいなかったら今の自分はないと思う。
この本を読んで三沢光晴の新たな一面が見えた。僕が絶対に無理だと思えるあの精神力はなんなのかがわかった。
今でもこのことだけは気持ちの整理がつかない。誰ともこのことだけは話したくない気分になる。どれだけ話しても尽きないし、どれだけ話してももう三沢光晴はいないから。
なんで死んでしまったんだよ、今でもそう思う。この本を読んで絶対に三沢光晴はリングの上で死にたくなかったんだな、と思った。リングに上がったら家族のことは忘れるけど、人に迷惑はかけたくないと思った三沢光晴だからこそ。どんなに言ってももう変わらないだろうけど、老いて笑顔で話す三沢光晴が見たかった。
これだけ自分の好きな人を思って自分の好きな時間を過ごしていたら潰れる。
これからも三沢光晴を好きでいる。憧れている。三沢光晴にこれからも励まされて勇気をもらう。だけどもういない。それがむちゃくちゃ悔しいし悲しい。どうにもならないことが苦しい。


三沢光晴外伝 完結編

三沢光晴外伝 完結編