『おらが村』を読んだ

昭和30年代の雪深い山間の秋田を描いたマンガ。オド、アバ、兄(ア)ンコなど、自分の父が使っている単語が標準語のように(この作品の村の中ではそれが標準語なのだけど)出てくる。


歴史の教科書として秋田県民には全員に配布、北東北の県民には任意配布でいいんじゃないかと思うくらいの傑作だと感じた。
その当時生まれていなかったけど、「人間の生活」というのが確かに生々しく、瑞々しく描いていると読んでいて何か伝わってくる。


冬から春、夏に秋、そしてまた冬……という展開に、読んでいる自分も同じ一年を過ごしているように感じられる。
自然を魅力的に描いていて、それがとても好きだった。そして描写力が素晴らしく高い。内容もただ自然を讃えているだけでなく、自然の厳しさや自然には勝てないこと、どうにもならない気候の中でそれでも自然と共に生きていくことを生々しく描いている。


山、川、田畑、季節の草花……本当に美しく、愛おしく、現代でもなくてはならないものだと思う。
人間はあくまでも自然の中で生きている、自然の中の一部だと再び強く感じた。自然あっての自分だし、自然のおかげで生きている。


人類がどんなに進歩してもこういう時代と村があったことを忘れてはいけないと思う。科学の進歩やコンパクトシティ、首都圏一極集中という時代でも、このおらが村は日本の中にあり続けてほしい。本当に傑作です。


ヤマケイ文庫 おらが村

ヤマケイ文庫 おらが村