『今昔百鬼拾遺 鬼』を読んだ

久しぶりの京極夏彦百鬼夜行シリーズ。しかも3ヶ月連続刊行。第一弾の妖怪は「鬼」。
やや外伝的な扱いなのか、京極堂は出てこない。その代わり妹の敦子が出てくる。
昭和の雰囲気、妖怪の気配、出てくる人物の個性と怪しさ……百鬼夜行シリーズのあの感じが見事に出ていて、読んでいて懐かしさと心地よさを感じた。
謎自体は文字だけにすると複雑でもトリッキーでもないのだけれど、これを京極夏彦に書かせ語らせると見事にまるで妖怪でもいるかのように不気味に思わせる作りに仕上がる。これが素晴らしい。途中いつもの長い薀蓄も入れつつ、見事に京極夏彦らしい作品になっている。この人しか書けないだろう、語れないだろうと思わせる。
第二弾、第三弾も非常に楽しみな第一弾だった。謎解きを楽しみたいというよりは、この妖怪な世界、昭和前半の世界に京極夏彦の語りで浸りたいという気持ちになる。


今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)