『あの歌がきこえる』を読んだ

曲名がそれぞれの話の題名になっている連作短編集。「いなせなロコモーション」があってちょっと嬉しかった。話の内容はちょっと辛かったけど。
この主人公の時代の生まれではないので曲名と思い出が一致するものはないが、「ああ、そういえば」とじんわりと学生時代が思い出された。
この話は中学から高校卒業までだが、中学、高校、大学と今でも覚えている印象的なことには必ず何かの曲が一緒についてくる。今となっては些細なこと、なんで覚えているんだろうと思うようなこと、いろいろなことが思い出としてあるが、その中になんらかの曲が流れている。
中学から大学という時期に聞いた、覚えた、歌った曲って一生のうちで一番大切な曲たちになるような気がする。悩んで、疑って、笑って、もじもじして、一生懸命になって、と全てが一番アホのように感情的になれた気がする。そんな時期に流れた曲だからいつまでも思い出すのだと思う。
自分の学生時代がちょっと懐かしく、ちょっと思い出してしまうあったかい小説。自分にとっての「あの歌」を思い出してしまう。

あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)

あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)