『倒錯の帰結』を読んだ

気が付くと船の上、着いた先は首吊り島と呼ばれる孤島、そこで起こるは水のないお堂での溺死といった連続密室殺人事件という「首吊り島」と、普通に暮らしていたはずなのに突然監禁される「監禁者」の二作品が収録されている。それがただ収録されているのではなく、上下逆に製本されていて、どちらからも読める作品になっている。文庫の最初から読むと「首吊り島」、上下ひっくり返して後ろから読むと「監禁者」になる。
しかもその孤島の密室殺人と都会の監禁事件という、一件関係ないような二つの話がつながっている。前から「首吊り島」を読み、次に後ろから「監禁者」を読み、最後に文庫中央にある袋とじを開けて二つの話が繋がる真相がわかる、という非常に凝った作りになっている。こんな本は初めてだった。
両作品を読んでいると頭が混乱してくる。どこまでが現実なのか、どこからが妄想なのか、二つの話の繋がりは本当なのか、それとも独立しているのか、時間軸は一緒なのか、そもそもこの作品の作者は本当に折原一なのか、などとどんどん混乱してくる。袋とじの真相を読んでもまだ混乱し、巻末の解説ですっきりするかと思いきやさらに混乱する。「首吊り島」から読んで「監禁者」を読むと次はまた「首吊り島」になり、「監禁者」から読んで「首吊り島」を読むと次は「監禁者」になる。読み終わっても読み終わらない、そんな不思議な作品。

倒錯の帰結 (講談社文庫)

倒錯の帰結 (講談社文庫)