『すばる 2007年 02月号』を読んだ

金原ひとみの小説『星へ落ちる』を目当てで買った。
「私」と「不倫相手」と「電話の男」の話。
感情がドバーッと溢れる書き方がすごいうまいなと思った。「私」の不倫相手に対しての思い、電話の男が「私」に受話器ごしに話す思いのどちらも底から感情が流れ出るのが強く伝わってくる。随所に現れる溢れ出る感情表現が全体のテンポをよくしている。
「私」が不倫相手に抱く気持ち、電話の男が「私」に抱く気持ちが、一見同じように見えて実は微妙に違うのがアクセントになっている。「私」に対して不倫相手はなるべく薄い印象になっているので「私」の不倫相手への思いがより鮮明に見えてくる。
全体的には静かな雰囲気だけどものすごいエネルギーに満ちている。その抑えと漲りが今までにはない感じで進化していると思った。
電話の男の「私」、「私」から不倫相手への感情ダダ漏れのスピード感、ベランダから部屋の中を見渡したときの部屋の中=私にも受け取れる暗喩表現、そしてオチ、綺麗で爽快ににまとまったラストだった。
昨年末の『ハイドラ』『ミンク』に続き新年早々『星へ落ちる』。同じような設定だけど色はそれぞれ違う。どれも個人的には当たりだった。そろそろ長編が読みたい。

すばる 2007年 02月号 [雑誌]

すばる 2007年 02月号 [雑誌]