『文藝春秋 02月号』を読んだ

芥川賞の『沖で待つ』が全文掲載されているということで買った。
男女、恋人ではないけど深い、友人といえる関係ほど軽くない、恋愛関係に絶対に発展しそうにないけど一番信頼している、そんな男女。
その絶妙な関係を非常に丁寧に書けていると思う。ただ、う〜ん、芥川賞かあ、という感じが強い。石原慎太郎の選評の「本質的主題の喪失」という言葉に同感。
正直これだけで文藝春秋の760円のもとが取れたとは思えなかった。しかしその他の記事を読むともとは取れたと思った。
特に「日本人の常識44」という特集がよかった。BRICs熟年離婚ロハス憲法改正ニート2007年問題デトックス...どれも今世間で関心を抱かれている言葉に対して執筆人が自分の考えを示している。非常に納得できる主張、飛躍しすぎではないかと思う主張など、読む側も考えながら読むことができとてもいい特集だった。
この中で一番気になったのが「デイトレーダー」の項。株投資で30万円を3億円に増やした大学生がこの項を執筆している。別に学生だろうがなんだろうが自分で考え正規の方法で儲けているのならそれはいいと思う。ただ、この項を書くほどの能力はないのではないかと思った。内容がほぼない。体験談を書いているだけで客観的な視点がほとんどなく、主張も説得力も弱い。「損益に関して無感情になることが、勝ち続けるコツなんだと気づいたのです。」という言葉は私には魅力的に感じずむしろ恐ろしさを感じた。
デイトレーダー」というと瞬時の判断力に優れ、世の中のことを広く知り広い視野を持っている人だというイメージがあったが、残念ながらこの執筆者からはそれらは感じなかった。そんなイメージを抱いていた私が愚かであるし、普通の人が大金を稼ぐというところが注目される理由でもあるのだけど、他の項と一緒にこの特集に入れるほどの文章ではないと思った。

文藝春秋 2006年 03月号

文藝春秋 2006年 03月号