もう一度見たがやはり見てよかった。
病気に相手を思う別れの恋と、じんとくる要素満載でしっかりとツボをおさえているが、それを凌駕するのが演者の演技力。九州の人にとっては話している方言が気になると思うが、私は九州の人ではないので映画の世界にしっかりと入れた。
大沢たかおと石田ゆり子の演技は言うまでもない。周りを固めている演者のも長崎のごく普通の光景によく溶け込んでいる。
大沢たかおの演技は昔から大好きだ。どんな男でも演じることができる。そしてどんな役を演じようとその演技に惹きつけられる。石田ゆり子はこの『解夏』にニッカオールモルト(ニッカウヰスキー)のCMと、見ている者に鉄壁の信頼感を与える。はずれがないし、期待通りなのにがっかりさせない。
気丈に振舞う隆之、でもそれは怯えの裏返しで、絶対に他人に気づかれないようにする。でも回りは隆之の性格をよく知っているから余計に辛くなる。そんな気持ちを誰よりも深く理解している陽子は、隆之をよく知っているゆえに目の前にして強く自分の気持ちを言えない。そして自分の気持ちを言えないのは隆之も同じ、おふくろも同じ。三人とも一人になった時に本当の自分の気持ちをさらけだす。それが悲しいし、強いし、弱い。
突き放されても無償の慈しみを抱く陽子と、狭くなった視界の中で見た陽子に自分の全てを見せた隆之。
そしてさだまさしの主題歌が秀逸。最後にあれがこられたらそりゃ感動に打ち震えるしかないでしょ。テレビ版ではすぐ終わったが、あの曲はやはりビデオなりDVD版で最後にフルコーラスで聞くべきだ。最後にあれを聞くか聞かないではかなり違うと今回地上波版を見て思った。
大きな起伏も劇的な変化も、奇跡もない。ただ、見終わった後には静かで強いものが伝わってくる。邦画の素晴らしいところはこういうところにあると思う。
今まで何気なく見てきたものの中に最後に見たいものはある。
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