これも一つの大切な思い出

前に本屋でバイトしていた方と話をしたところ、「エロ本を買いに来たやつは100%わかる」らしい。しかも店に入ってきた瞬間に「あ、こいつエロ本買いに来た」とわかるらしい。
まず入って来てちょっと挙動不審。隠していてもわかる不審さ。まずは獲物(=エロ本)のところに行かず、エロ本コーナーの逆方向、そしてちゃんとエロ本コーナーが見えるところに向かう。
そして獲物を徐々に思いつめていくかのように移動しながら段々と近づいていく。
獲物付近に行ったら隣の別のコーナーの本を立ち読み。もちろんまともに見ていない。店員側からは「お前その本読んでいないだろ」と言いたくなるほどバレバレらしい。関係ない本を読みながら隣の獲物をチラ見。どの獲物にするかを一瞬のチラ見を必死に繰り返して物色。
とにかくチラ見。必死にチラ見。手元の本の中身が全く頭に入らないほど頭の中は隣の獲物。チラ見。チラ見。表紙で全てを判断しないといけないから全力でチラ見。できれば文字も読もうとチラ見。エロは視力も上げるほどのチラ見。
獲物をハントするときは一瞬。まさに「掻く」という表現がぴったりというほどのハント。そして購入。


エロ本を買う若者のほぼ100%はこのような動きらしい。自分のガキんちょの頃と照らし合わせると確かにこんな動きだった。恐ろしい、本屋の店員に全てまるっとお見通しにされていた。ガキんちょの頃必死に悟られないよう完璧に動いていたはずだったけど、実は本屋の掌で踊っているだけだった。
ネットなんかない、AVなんて友達の兄ちゃん経由で時々入るか入らないかという希少商品だったあの頃、エロ本がガキが到達できる最高の地点だった。ネットで人目を気にせず手軽に見ることなんてできなかった。店員が、他のお客さんの目が怖かった。緊張した。おびえた。それでも欲しかった。たぶん男の子なら誰でも通る道。目の前に栗の花畑が見える茨の道。