『絡新婦の理』を読んだ

厚い。1374ページ。分冊文庫版なら四巻に分かれる。
濃い。内容が濃い。目潰し魔に絞殺魔、女学校の中に潜む怪しい集団、謎の聖母・・・。一つ一つの事件の真相はなんなのか、そしてそれらがどう絡んでいるのかそれとも関係ないのか、複雑すぎる。
この話の最初の一行にこの話の全てが書かれている。
「あなたが―――蜘蛛だったのですね」
これが全て。最初に最後が書かれている。読み始めはなんのことか全くわからなかったが、最後まで読んでまた最初に戻って読んだ。そして章と章の間の不思議な男女の会話も読み返した。そういうことだったのか。
終盤京極堂が現れる場面では、文庫の表面から空気が変わるのが伝わってきた。あまりにも事件が多く複雑なため、憑物落としをしようとするときには待ってましたの気持ちだった。
非常に複雑な話だった。蜘蛛の糸の上にいるように、自分が今どの位置にいるのか、どこまで進んでも円上に回っているだけのように感じられた。
読んでいる途中で蜘蛛の糸の中心には誰もいないんじゃないか、本当は真相はないんじゃないのか、実は全て分散しているのではないかとすら思った。そう思っていたので全てが明らかになったときは思わず唸った。真相の真相。
ある意味話の中心でもある父系、母系についてはとても強い驚きを覚えた。父系、母系の見方しだいでこんなにこの話の見方が変わるのかと思った。片方の見方のまま読み進めていた。逆から考えると全然違う。
京極堂木場修、榎木津、関口のメンバーに、いさま屋、今川、さらには姑獲鳥の夏魍魎の匣に関係した者まで出てきて、京極堂オールスターズという感じだった。特に姑獲鳥の夏魍魎の匣の話が絡んできたときにはものすごく驚いた。まさかそこまで関わってくるとは。
『絡新婦の理』というタイトルもぴったりだし、画図百鬼夜行の絡新婦の絵もこの話にぴったりだった。たっぷりと京極堂の世界に浸った。


文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)