『ナイフ』を読んだ

五つの短編。『ビタースィート・ホーム』以外は「いじめ」がテーマ。
いじめにあう子、いじめにあっている子を見ている子、わが子がいじめにあっている親、いじめられている立場からいじめる側にいってしまいそうな子、どれもものすごく鋭く書かれていた。そこに逃げの姿勢はなかった。「いじめられる側に問題がある」なんて言葉はクソだと思える。
小説だからもっとハッピーに、なんてことは許さなかった。読むのが辛い描写がいっぱいあった。それでもそれが現実だ。小説の世界だけど「小説だから」なんて思えない力があった。全てが解決、ハッピーエンドでなんか終わらない。
テーマの「いじめ」に別の話が加えられているが、それがまた話全体に強く作用している。みんな何かを抱えている。
そしてこれだけ読んでいくのが辛いのにどの話も読後感は悪くない。むしろいい。
『キャッチボール日和』で泣きそうになりその次の『エビスくん』で思わず泣いてしまった。号泣とまではいかないけどじわっときた。
いい本に出会えたと思う。

ナイフ (新潮文庫)

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