あとがきにもあるけれど「坂を上る」という表現が合う6つの話。
前半3つは最後まで読んでもはっきりとしたものが見えなく、もどかしさに多少イライラした。
だけど読み進めるとそれがたまらなくなってくる。解決していない、進まない、そんな話ばかりだけど胸が熱くなったりしめつけられたり、自分だったらと深く考えたりする。重松清が現実を鋭く見つめこれでもかというくらいリアルに書いている。その登場人物の気持ちが読み手に伝わってくる。
「団旗はためく下に」が一番よかった。本当に読んでよかったと思った。高校を中退しようとする娘、応援団の頃から「押忍」の精神を持ち続ける父、厳しい現実の父の元上司や応援団仲間。一人の人がこれだけたくさんの人の気持ちを書けるのかと思った。ラストは泣きそうになった。
行間から滲み出る、目をそらしたくなるような現実が書かれているフィクションの小説。でもフィクションとは思えない。20年後また読みたい小説だった。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06/28
- メディア: 文庫
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