『罪の轍』を読んだ

傑作!読書最高!
今年読んだ本の中で一番面白く、切なく、そして熱くなった。読み終わった後も興奮が止まらなくて、頭の中でもう一度この作品を最初から振り返っていた。


北海道の小さな島から物語は始まり、そこから舞台は東京に変わり、強盗殺人、誘拐事件と社会を震撼させる事件が起きる。


宇野寛治という男が冒頭から出てきて、強盗殺人や誘拐事件にも関わっているように捜査からは見えてくる。しかし、冒頭の漁の様子から見るにどうしてもこの北国訛りの“莫迦”がそんな事件を起こすようには思えない。実際に寛治の行動の描写を読んでもそんな風には思えない。それでも、寛治は犯人なのか、それとも真相は別にあるのか……そんなことを考えながら読んでいったらどんどんと引き込まれていき、とにかく先が読みたい先が読みたいと夢中になった。


600ページ近い長編なのに、全く飽きさせないし中だるみもない。そして読んでいくうちに単なる殺人事件・誘拐事件の謎を追う話ではなく、もっと深く暗く重く歪んだ背景が見えてくる。事件と共に背景が明らかになっていくと、非常に不謹慎なのかもしれないけどどうしてもこの事件の犯人を憎めなかった。やったことはもちろん許せないけれど、そこに至るまでの過去とされてきたことを考えると完全には憎めなくて、心に非常に重く黒い霧がかかったようになった。単なる勧善懲悪の刑事ものではなくしているこの部分が一番この作品を傑作にしていると思う。


登場人物それぞれの心情はもちろん丁寧に勝つ感情移入できるように書かれていて、かつ最初からクライマックスまでのテンポが非常に良い。両方共恐ろしいほどのうまさなので、とにかくもう続きが気になってしょうがなくなる。クライマックスはもう興奮と緊張が高まりまくって、脳内にその場面が浮かび動いていた。本当に浮かんでくるほどハマれるし夢中になる。


罪の轍、これすごい作品だ。


罪の轍

罪の轍