『下町ロケット ヤタガラス』を読んだ

面白かった。第一弾の下町ロケットに比べると結構狙っている痛快さがある。そのため、これがこうなって、この苦境もこれで乗り越えらえて、そして壁となっているこれは最後こうなるんだろうなというのが読めてしまう。それでも水戸黄門的な形に近い構成は読んでいて痛快だった。ここまでわかりやすくしたのはドラマ化を意識しているのかなとすら思ってしまった。


組織の論理や規模の大きさを悪用した振る舞い、くだらない社内政治など、大企業の負の部分が見える一方、ベンチャーや中小側も勝ちきれない面が見える。どっちがどっちとは言えない。そんな中佃製作所は今回もしっかりと道を外さず強い信念でそれぞれが動き、立ち向かい、生きている。前作でギアゴーストを去ったシマさんこと島津が佃製作所に入ったのもよかった。


終盤はいつもの佃さんらしく情を捨てたような展開が見えるが(そうしてもおかしくないことのことをこれまでにされていたから気持ちはわかる)、最後の最後はやはり佃製作所として、一人の人間として、技術にこだわり人に役立ってほしいと思う技術者としての選択をする。素晴らしい。
「意地や技術を見せつけることではなく、人のためになろうと思うことが本当にすべきこと」ということを佃さんが教えてくれた。企業同士の競争はどうしても商売をしている以上出てくるけど、それでも根っこの部分は「お客さんに喜んでもらうこと、お客さんの生活を楽にすること」だ。それを忘れなかった佃さんはじめ佃製作所メンバーは本当に素晴らしい。だから読後感が良い。


民間で飛ばしたロケットが巡り巡って農家を救う、これぞ技術と発想のあるべき繋がり。面白くて睡眠時間削って自分の時間増やして一気に読んでしまった。

下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット ヤタガラス