『AX』を読んだ

伊坂幸太郎らしさ、素晴らしさを感じられた一冊だった。
短編が5つだけど、どれも伏線が張り巡らされて、それがしっかりと回収されている。伏線といえば伊坂幸太郎と勝手に思っているけれど、そう思っている自分にとってはその伏線を思いっきり楽しめた。
殺し屋の作品と聞くと重く痛々しい描写を想像してしまうけれど、そういうことは極力なく、主に殺し屋の妻と息子への心理が描かれている。殺し屋稼業だが、家族を思う。一見相反するようだが、その思いがあるからこそ殺し屋はこの仕事を辞めようと強く思っていく。ただし、その”正しい”思いが”悪性”なものを呼ぶので後半はシリアスになっていく。


「最強の殺し屋は、恐妻家」「一番恐れているのは妻」ということすら伏線にして最後綺麗にまとめ上げる構成に、読み終わって思わずにやっとしてしまった。”フェア”だ、非常にフェアになっている。


この一冊単体でも十分すぎるほど面白いが、グラスホッパーやマリアビートルといったこれまでの作品の話も少し出てきて、殺し屋シリーズ好きにとってはもうたまらない時を過ごせた。

AX アックス

AX アックス