『マリアビートル』を読んだ

すごい。休日にどこか旅行に行ったくらいの濃密な時間を過ごせた。読んでよかった。
舞台は東北新幹線。途中停車駅以外では外には出られない密室状態。その中に殺し屋の数々。さらには殺し屋ではないが登場人物の中で一番の悪がいる。
読み始めてすぐにこの設定に惹かれる。東京から盛岡までの2時間半、その間にこんな面々が乗っていたら面白くないはずがない。そして新幹線に乗っていない殺し屋や悪の数々。読んでいて、自分が登場人物だったら何も危害が及ばず途中で降りたいと切に願うだろうなあと思った。しかし客観的に物語が読める読み手としては途中で降りたいなんて一切思わない。とにかく面白すぎる。
面識がない殺し屋たちが号車内、号車と号車の間のデッキで次第に出会い、そして絡んでいく。こんな狭い空間なのにとてもダイナミックに人物が動く。そして一般の乗客は自分が乗っている新幹線でとんでもないことが次々と起こっていることに全く気付かない。
新幹線よろしくノンストップで進む物語。そして全体に漂う「悪」の存在とそれに向かう者達。溜まりに溜まった悪へ答えが見えるラストの展開がたまらない。
旅行に行ったよりも貴重な経験ができた。世の中のどこかでこんな2時間半があるのかもしれない。

マリアビートル (角川文庫)

マリアビートル (角川文庫)