『チルドレン』を読んだ

おもしろいっ！もうこれは説明不要の面白さ。
そして巧いっ!普通の人は書けないこの巧さ。プロとはこうであると感じさせる巧さ。
５つの短編のどれもが面白くてしょうがない。そして読み進めて行くと連作短編となっていることに気付き、この作品の深みが増す。
全ての話に出てくる陣内がたまらなく魅力的だ。天然か計算か、ころころ変わる発言は適当なのか真剣なのか、「俺たちの周りの時間が止まっている」などと真実を知って言っているのか、それとも本当にそう思って言っているのかわからないセリフの数々。
鴨居、武藤、永瀬、優子といった陣内に近いサブはもちろん、１つの話に出てくるちょっとした人物までよく書かれている。無駄のない見事な作りになっている。
奇跡が５編。最後まで読んでさらに奇跡がもう一つ。どれも小さな奇跡だけれど、大切な奇跡。うまいっ！

チルドレン (講談社文庫)