『狂骨の夢』を読んだ

前作が箱、箱・・・なら今作は骨、骨・・・
相変わらず幻想的な世界を作り出すのがうまい。そしてその中の数々の不思議なことを論理の破綻無くしっかりと現実のこととして憑物落としをしている。
妖怪がいるのでは思わせる世界観は1〜3作目の中では一番だと思った。その世界にひきこまれてとにかく次へ次へと読んでいきたくなる。
前作ではいかにも関連ありそうな事件を関連はないと言い、今作では人も場所も関係なさそうな事柄が全て関連していると言う京極堂。この男の知識量と思考力にはただただ関心するばかり。前の事件からたった二ヶ月でまたこんな複雑な事件の憑物落としをしなきゃいけないなんて。
章ごとの場面展開がネタを小出しにする感じで、「?」の数と期待がどんどん増していく。それだけ「?」が増えているから「京極堂出てきてくれ。京極堂の話が聞きたい」と思いながら読み進めていく。そして京極堂が出たときは期待感が爆発。すでにそう思っている時点で読んでいる者も憑物落としが必要な状態になっているのかもしれない。
前半に二度も三度も本人や他者の言葉より朱美の話が出てきて、「また朱美の話かよ、もういいって」とさすがに冗長さを感じたが、実はそれも必要不可欠な部分だった。もちろんそれが必要な部分だとは最後まで気付かなかった。なぜあんなに同じような話を場面が変わるたびにするのか不思議だったが、ラストにそういうことなのか、と思い前半を読み返した。
姑獲鳥の夏』の関口視点での描写のように、今作では朱美の頭の中の構造というのがずるいなあと思った。読者にとって悪い意味で予測できないのでちょっと無理矢理な感はあった。
でもそれを超える謎と憑物落としがたっぷりあるので十分満足。

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)