『浅草キッド』を見た

芸人の話なのに前半は静かで、暗ささえ感じる。たけしも駆け出しの頃でまだ芸というものもなく、寡黙に描かれている。売れないたけし、客の入らない浅草フランス座と、未来が見えない環境に悲哀、哀愁が漂っている。


中盤以降たけしが売れ始めてもその底に流れる物悲しさはあり続けて、派手なコメディ映画になっていない。でも、それがいい。たけしの才能が徐々に目覚めていき、そして師匠は売れないまま下降していく。それを静かな描写の中見ていると、個人的にはこれはビートたけしではなく師匠の深見千三郎の物語なのではと思ってしまった。それくらい大泉洋演じる深見に感情移入してしまった。たけしに芸人としての基礎を教えて、それが開花していく姿をぶっきらぼうながらもしっかりと見て陰で動いていたんだなと思うととても胸が熱くなった。そしてそれをしっかりと身につけたたけしが所々でボケて師匠にツッコまれるところもよかった。柳楽優弥はよくビートたけし役なんて途轍もなくプレッシャーかかる役をやったよなあ。


「笑われるんじゃねえぞ、笑わせるんだよ」という師匠の言葉って、芸人以外にも通じるような気がする。一般人だけど笑われるんじゃなくて人を笑わせられるように生きていきたいな。
笑われるんじゃねえぞ、笑わせるんだよ。


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