『奈津の蔵』を読んだ

素晴らしい作品。紙では手に入らず電子版で読んだが、このマンガはもっと日本のために全国隅々まで届かないといけない本だと思った。
夏子の酒」の夏子の祖母奈津の話。米搗きは水車で、電気は村に引かれていない。そんな昭和初期に酒造りの佐伯家に嫁いだ奈津の数十年が描かれている。
女は穢れと言われて蔵に入れず、でももろみの香りに引かれ運命のように日本酒の世界に入り込んでいく。
絵の才能があるのに家が貧乏でその道に進めないみき姉や杜氏を目指し一心不乱に働く安市など、奈津以外の登場人物のストーリーも非常に良かった。


夏子の酒はほぼ酒造りだけの話だったけど、奈津の蔵は嫁姑問題や家族子育て、そして戦争の話が酒造りの世界の中に入ってくる。
特に戦争が激化して酒造りをする人が減っていき、酒造りの量や質にも政府の干渉が入り、そして戦争の火が迫ってくる後半は読んでいて本当に心が苦しかった。特に綾ちゃんと奈津の場面では読みながら涙が出てきた。


手作業、人力で厳しい自然の中作り続けていた日本酒、戦争という時代で潰れかけても続けてきた酒造り。フィクションかもしれないけど、現実の世界でもこのような困難を幾度も乗り越えてきた酒蔵はきっといっぱいあると思う。そういう努力があったからこそ今でもおいしい日本酒を飲むことができる。この作品を読んでますます酒造りが、日本酒が好きになった。ここから夏子の酒に繋がるんだと、もう一度夏子の酒読みたくなった。
素晴らしい読後感。読んで良かった。


奈津の蔵 1巻

奈津の蔵 1巻

奈津の蔵 2巻

奈津の蔵 2巻

奈津の蔵 3巻

奈津の蔵 3巻

奈津の蔵 4巻

奈津の蔵 4巻