『Gスピリッツ Vol.46』を読んだ

今回の特集は「1981年8月9日以降の国際プロレス」。国際プロレスは私が生まれる前に誕生し、そして崩壊しているので、リアルタイム経験ではなく完全にプロレス歴史学の中で知った知識のみの世界だ。そのため、国際プロレスという団体やそこに所属していたレスラー、行われた試合というのは映像ではなくほぼ雑誌などの活字で知っている。つまりそれくらい自分としては遠い存在。
しかし、それでもこの特集は面白かった。


ラッシャー木村の息子さんが語るリング上と家でのラッシャー木村は、私が全日・ノア時代に知っているラッシャー木村と同じで、本当にプロの職人としてリングを渡り歩いてきたというのがわかる。新日に乗り込んだ時のヒールっぷりは家族の生活まで脅かされたというからあの頃のファンの熱狂っぷりもすごい。飼っていた犬が円形脱毛症になったという噂の真相も知ることができた。


そんなラッシャー木村という人物を語る中で、三沢さんの男気の話も知ることができて本当に嬉しかった。
「大八木さんが言った一言が…親父が倒れた直後に、”木村さんはツイてますよ。全日本で倒れていたら、クビですよ。三沢が社長だから、ウチで木村さんを一生面倒見ようと言っていますよ”と。それを聞いちゃったから、僕は三沢さんの人間性に心酔したんです。だから、あの引退発表の時に”三沢さんの言うことは聞いてくれ”と親父を説得したんですよ」
本人だけではなく家族まで心酔する三沢光晴という男の素晴らしさ。本当に誰かのために最後まで生き続けた人なんだなと改めて感激して、読んでいて涙が出てきた。


三沢さん以外にも、ジョー樋口についても
「慶応病院で死線を彷徨っている時にジョー樋口さんが見舞いに来てくれたんですが、親父が”死にたい”と言ったら、ジョーさんは”ラッシャー、何言ってんだ!挫けるな!一緒に頑張って来たのに…このバカ野郎が!”と。その声が廊下まで聞こえてきましたね。ジョーさんとウチの親父だけがノアで嘱託というポジションだったんです。火葬した時も僕が大泣きしていたら、ジョーさんは”泣いちゃダメだ。魂を戻すようなことをしちゃダメだ”と声をかけていただいて」
とエピソードが語られているが、こちらも目頭が熱くなった。”レフリー”としてこの場面でも”レスラー”を奮起させていたんだなと、改めてプロレスラーとレフリーの絆の強さを感じた。


ラッシャー木村以外にはマイティ井上の各レスラー評、マッハ隼人の選手人生の終焉、高杉正彦国際プロレス後のパイオニアに賭けたレスラー人生(と、剛竜馬をボロカスに言う)についてなど、興味深いインタビューがたくさんある。


国際プロレス特集以外では、スタン・ハンセンのジャイアント馬場への敬愛の気持ちに溢れたインタビュー、カール・ゴッチの実娘であるジェニン空中の父との確執の真相に触れたインタビューなど、もうプロレスファンとしてはたまらない記事のオンパレードだった。
ジェニン空中さんが繰り返し言っている「”本当はこういう終わり方ではなければ良かったのに…”という後悔の気持ちは持っています」というのは、一般の家庭の親子にも言えるのではないかとしみじみと感じた。


今回のGスピリッツ、面白かった。
Gスピリッツは過去のプロレスネタが中心なので、掘り下げるものがなくなるとネタ切れになるのでは?と思っていたが、最近のスーパー・タイガー特集、カール・ゴッチ特集など、もう十分語られてきたのではないかというテーマを見事に新鮮なものとして作り上げている。
次号にも期待。