『沈黙者』を読んだ

一家四人惨殺事件と同じ地区の老夫婦殺人事件、その間に語られる「沈黙者」の事件から裁判まで。
「?」がいっぱい頭の中に浮かんでくる作品だった。
一家惨殺事件と老夫婦殺人事件の犯人像がわかりそうでわからない。『失踪者』のように少年犯罪が顔を見せるのか、と思いつつもそれが犯人の姿と重ならない。これだけ恐ろしいことをした犯人は誰なのか?
そして「沈黙者」は誰なのか?なぜ万引きと傷害で逮捕され罪は認めるのに自分の名前だけは絶対に語らないのか?明らかに自分が不利になるとわかっているのにそこまでして名前を出さない理由はなんなのか?沈黙者が沈黙していることと二つの殺人事件は関係があるのか?
どこまでも疑問が続いていった。これが真相かな、と予想しながら読んでいたが見事にはずれた。これだけ複雑で難解な事件も全てが明らかになったらあまりにも単純だった。そしてどこまでも悲しい事件の重なりだった。
沈黙した理由も、事件の引き金も、全体像も、少しのずれが重なった結果だった。

沈黙者 (文春文庫)

沈黙者 (文春文庫)