『メビウスの殺人』を読んだ

我孫子武丸の速水三兄妹シリーズだが、この作品はオチが読めてしまった。オチが読めた原因は『殺戮にいたる病』を先に読んでいたことと、当時に比べて格段に発達したネット社会になったせいだろう。
今作品は氏がスラップスティック版『殺戮にいたる病』と言っているとおり、両作品が非常に近いものに感じる。
そして一番の原因は現代のネット社会のせいだと思う。顔を合わせないコミュニケーション、ネットが絡む犯罪と、インターネットに関する事件は大幅に増えている。そのため、2005年現在では十分考えられうる結末だった。
この作品が最初に発表されたのは1990年2月だが、当時読んだならその結末に強い衝撃を受けただろう。「そんな馬鹿な、有り得ない。空想の世界だ」と思っていただろう。しかし現在ではそれが悪い言い方かもしれないが当たり前になっている。
見方を変えればこの作品は現在の犯罪事情の予言書だ。そう考えるとこの作品を15年前に出した我孫子武丸はすごい。

メビウスの殺人 (講談社文庫)

メビウスの殺人 (講談社文庫)