チラチラとフルフル

この前久しぶりに電車に乗り魔都に行った時の話。


電車で座席に座っていると、前に女性が立ってきた。コロナ5類ということもあり、マスクは着用せずクールな表情で立っていた。


ちょうどホームから電車に乗ったということもあってか暑そうで、手にはハンディファンを持っていた。そうだよねぇ、ホームで待っていた後だと暑いよねぇと思いながら何とはなしにその女性を見ていると、チラチラ、フルフル。


ん?え?何かチラチラと見えて、それがフルフルと小刻みに動いている。もう一度その女性をジロジロにならない程度に見てみると、あった。
鼻くそが、あった。鼻くそが鼻の中にチラチラとあって、それをハンディファンの風がフルフルと動かしていた。


なんだかとんでもないものを見てしまった気がしてしまい、思わず視線を下げてしまった。こんなクールな表情の方が鼻くそに気付かず、それどころかハンディファンでそよがせている。


言えばいいのか、いや言ってどうする、言ったらこっちが変態に思われるし相手は恥ずかしいだけだ、でも言わずにこんなフルフルをずっと見せているのはまずいのではないか……そんな思いが頭の中をフルフル、いやぐるぐるしながら電車に揺られていた。


結局その方に言うことはできず、自分が先に降車駅に着いて立ち去った。
今でも思う、あの時どうすればよかったのか、あれでよかったのか。言わないということを相手への配慮だと思う自分は心が弱く汚いのか。
自分の弱さ、汚さ、情けなさをチラチラのフルフルで感じてしまった。もっと心身共に強くなりたい。
今でも思い出す、あのそよぐ鼻くそを。