微妙な関係の先に行けない

早朝にコインランドリーを使うことが度々ある。4時や5時台なので他のお客はいない。しかし人はいる。


それはコインランドリーの店員さん。無人24時間なんだけど、空いている時間帯に恐らくホテルなどの施設から回収したタオルやシーツを洗濯乾燥機で回している。あまり稼働しない時間も有効に使って、かつ回収物の洗濯乾燥でダブルで稼いでいるんだと思う。
コインランドリーって儲かりそうだな、とか思いながら自分は乾燥が終わるのを待っている。そして店員さんは洗濯乾燥が終わった物を取りに来る時に従業員部屋から出てきて、そして洗濯物を持ってまた従業員部屋に入っていく。


その僅かな間にお互い顔を見て、そして「おはようございます」と簡単な挨拶をする。最初は相手から声をかけてきたから、恐らく知っている人として認識されているのだと思う。
こちらも挨拶されて嫌な気持ちにはならないので返すけど、それ以上はいけない。


それ以上はいけないのだ。人見知りということもあり、「おはようございます」の先がいけない。「空いている時に回しているんですか?」とか「いつも早朝にやっているんですか?」など聞きたいことはいっぱいあるが、聞いたことはない。


お互い認識していて軽く声もかけられる、そんな微妙な関係が苦手でそれ以上はいけない。きっとその微妙な関係を越えて話をできたらもう少し世界は広がるんだろうな。でもできない、だって俺だから。


早朝の数秒の認識と挨拶の時間が嬉しいけどもどかしい。こうして早朝の乾燥機が回る音を聞きながら過ごす時間は流れていく。