『永遠の0』を読んだ

特攻で戦死した本当の祖父のルーツを調べていたら、そこに出てきたのは「臆病者」という評価。会ったこともない祖父とはいえ臆病者という評価に戸惑う孫の僕。戸惑いと謎を抱きながら調査を進めていって見えた真実。
家族に会いたいから、愛する人がいるから戦争で死にたくない、帰りたいんだ。一緒の部隊だった人たちの証言を聞くたびに宮部久蔵の強い思いが伝わってくる。
臆病者と言われても帰りたい場所、家族がある。上官に殴られても、部下に嗤われてもその思いは変わらない。臆病者ではなく、戦争の中でも本当に大事なものを忘れなかった人だからその思いを持ち続け、命を投げ捨てようとする部下に「生きろ」と言い続ける。
そんな思いを聞いているだけで途中から涙が止まらずに読んでいたけれど、最後に全ての真実が明らかになった時さらに涙が止まらなくなった。それほどまでに生きたいと願い続けた宮部久蔵がなぜ特攻隊で死んだのか。こんなことがあるのか。終戦から60年目にこんなことがわかるのか。家族とは、繋がりとは、全てが最後にわかった時、身震いして泣きながら読んでいた。間違いなく傑作。むしろもっと早く読んでいればよかった。
「必ず生きて帰ってくる」「たとえ死んでも、それも、ぼくは戻ってくる。生まれ変わってでも、必ず君の元に戻ってくる」
この言葉に宮部久蔵の思いと、時を超えた真実がある。

永遠の0 (講談社文庫)