『アーモンド入りチョコレートのワルツ』を読んだ

森絵都氏の書く作品はなんて優しいんだろう、改めてそう感じた。強がっている人間も、嘘をついて人を喜ばせようとする人間も、非常識に見えるような人間も全て包み込んでいる。
「子供は眠る」は読みながらみんな同様章くんに不満がたまっていった。でも、章くんの本当の考えがわかったとき、今度はそんなことを考えているこっちが恥ずかしくなった。たぶん合宿に参加していたら最後にはシューマンを全部聴いてやろうと思うだろう。
「彼女のアリア」は一番気に入った。不眠症の少年よりも、虚言癖のある少女のほうの気持ちが痛いほどよくわかった。自分でもわかっているけど、嘘をやめることはできない、どんどん広げていってしまう。そんな少女は優しさに溢れているのだと思う。そしてそんな少女の嘘に気付いて怒りを覚えるも、最後はその嘘の優しさを包み込める少年もとても優しかった。
表題作はサティおじさんと絹子先生の常識を逸脱したようなはしゃぎっぷりが爽快だった。もちろんそんな非常識な振る舞いから離れていく人もいるけど、それでもそれをパワーとして感じひきつけられる人もいる。ちょっぴり寂しいラストが余韻として読後残る。
優しさに溢れた作品。

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)