『金閣寺』を読んだ

寺の若い層が幼き日に金閣の話を父から聞き、興味を抱き、やがてそれが憧れ、執着、そして放火しなければならないという気持ちにまで変わる様子をとても丁寧に書かれている。結構昔の、しかも寺を舞台とした話で、難しいかなと思ったが、注釈もあり、読み始めるとその魔力にとりつかれ一気に読めた。
強いコンプレックスと「持つ」者への憎しみと蔑みなどが詳細に書かれており、読み終わった時にこれは別に異常者のことを書いたのではないな、と思った。何をもって普通というかはわからないが、普通の人がこうなってもおかしくはないと思った。
現代社会でのほうが起こりやすいはずだ。誰もが必ず持っているであろうコンプレックス、ある事柄を集中的に嗜好する、つまりマニアックな一面は現代のほうが強いと思う。
憧れと憎悪は見事に裏返しになっていて、いつそれがひっくりかえってもおかしくない。こんな作品を作り上げた三島由紀夫はやはり天才だ。


金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)