サザンな始まり

【10月19日】
昨日子どもが産まれた。朝に無職願望を抱きながらサザンの毛ガニさんの誕生日を祝っていたけど、まさかその数時間後に子どもが産まれて毛ガニさんと同じ誕生日になるとは。


朝ご飯を食べている時に、妻が何かお腹の中でチョロチョロいっている気がする、と言っていて、でも別にどこか痛いわけでもなく普通に話してご飯を食べていた。
ちょうど今日が定期健診の日だったので、その時に体調や進み具合を診てもらえばいいねと話してそのまま私は会社に行ったが、10時過ぎに妻から「破水していて入院することになった」と連絡が来た。
破水と聞いて結構オロオロしたのだが、その後の妻からの連絡でまだ進んでいないし体は問題なく、出産はこのまま行くと明日と聞いたので少し気持ちが落ち着いた。


もし入院することになったら持ってきてほしいと言われている荷物があったので、それを届けるために会社を早退し帰宅した。
帰宅して連絡を取っていると、まだ陣痛が来ておらず通常の入院なので、面会時間は病院規定時間の15時以降になると聞き、じゃあ15時以降に行くよと返事をして荷物を確認し準備していた。
予定日は来週だったので、今週土曜にボサボサ頭を切ってそれなりに綺麗な格好でお産に立ち会おうと思っていたけど、明日産まれるならボサボサ頭のままだと思い、面会時間前に急いで散髪に行きそれなりの頭にしてもらった。今思えばこれがターニングポイントだった。


散髪が終わったらちょうど15時少し過ぎだったので、よし面会時間になったなとバイクに入院道具を積んで雨の中病院にいざ出発。
病院に着き、荷物を両手に持って病棟に向かい、産婦人科の受付で今日入院したはずなので部屋を教えてほしいということを伝えると、少しの確認の後に「おめでとうございます」の回答。
はて、産婦人科というのは出産準備に入るとまずおめでとうと言うのだろうか。そんなことを思いながら看護師の後について入院部屋に向かい歩いていった。


キョロキョロしながら廊下を歩いていると、妻の名前プレートがある部屋があったので、「あ、ここですね」と言ったら「いえいえこっちです」との回答が来た。ますます頭の中に「?」が増えていく。
少し立ち止まって部屋の中を見ると、妻はいないがベッドのところに食べ終わったお盆があり、「ああ、昼飯を食べて今どこかで出産に向けた診察を受けているんだな」と思い納得した。


再び看護師に付いていくと「分娩室」と書いた部屋の前で止まった。
「あれ、分娩室ですか?」
「はい、おめでとうございます」
「あ、陣痛始まったんですか!?」
「いえ、もう終わっていますよ、おめでとうございます」
「え?」
「え?」
「いや、午前中入院で、出産は明日になりそうと聞いていますけど」
「あれ、でも産まれていますよ」
「ええっ!!」
「ちょっと待ってくださいね、念の為確認します」(分娩室の中に入っていく)
「(どういうこと?明日出産でしょ?同姓間違い?)」
(分娩室から看護師出てくる)「はい、おめでとうございます」
「ええー」
そんな会話をした後分娩室に入ると、妻が笑顔で迎えてくれ、そしてその横には小さな赤子が。本当に産まれている!


全く想像していなかった展開に、父親になった実感や感動よりも「どういうこと?」という疑問の感情のほうが支配的だった。
妻から順を追って話を聞くと、午前中は特に何も兆候がなかったけど、昼飯を食べたあたりからなんかお腹全体が痛い気がするなあと感じて看護師に話して確認してもらったところ、一気に進んでいそうということがわかりそのまま分娩室に入り、あれよあれよという間に出産したらしい。
初産にしては超スピード安産だったようで、私が髪を切っている時に産まれていた。最後に連絡取ってから2時間ちょっとの間に出産していた……そりゃ病棟行っていきなり「おめでとうございます」と言われてもさっぱり状況が理解できないよ。
妻曰く「陣痛間隔10分以内とかそういうところまで考える前にお産が進んだし、もし急にそれを連絡したらあなたのことだからバイク飛ばしてきそうで、雨の中の事故怖かったから言わないでおいた。どうせここから夜まで何時間も陣痛続くだろうから面会時間くらいにくれば間に合うと思ったし」とのこと。つまり妻すらこのスピード展開は想像していなかったようだ。


そんなわけで入院道具を持ち込んでさあここからだ!というはずがまさかの赤ちゃんとご対面。産まれた時間がなんとも親孝行だった。胎教でしっかりサザン、桑田さんの曲を聴かせていたおかげかな。いや、私が単に聞いていただけなんだけど。
初顔合わせは泣いておらず目をぱっちりと開けていて、新しい世界を「なんだここ」とキョロキョロしている感じだった。産まれたばかりなのに手も足も爪がしっかりと生えている!そしてちょっと切ってあげたいくらい伸びている!なんだ、しっかりもう出る準備はできていたんだね。


そこから両家の親に電話したり写真を撮ったりで、あれよあれよと時間が過ぎていった。抱っこもさせてもらったけど、しっかりと腕に重さが伝わってきた。そして暖かい。いい匂いがする。これが赤ちゃんなのか、そして我が子なのか。
なんだかいろんな感情が巡り巡り、父親が一番ぼーっとしていた気がする。


病院からの帰り道にいつもお世話になっているバイク屋に報告に行き一緒に笑顔になり、そしてもう一ついつもお世話になっている居酒屋に報告に行き夜ご飯を食べた。女将さん我がことのように喜んでくれて目が潤んでいた、大将いつものように豪快に笑って祝福してくれた。一人じゃないんだなと、こういうところでも感じた夜だった。


我が家に家族が増えた。ようこそ、楽しい家族へ。


【10月20日
会社を休み、午前中に妻から頼まれていた新しく持ってきてほしい物を準備したりいろいろやっていて、午後から面会に行った。


今日は昨日とうって変わって、ほとんど寝ていた。寝顔ばかり写真に収めた。
途中初めてのおむつ交換も二人でやったけど、事前にたまごクラブで読んでいたとおり、見事におむつを開けるととしゃー。開放感でおしっこするというのは本当だった!と変に感激した。


良く寝る子だったので、慣れない手つきで抱っこしたり右左逆にしても泣かずにいてくれた。寝る子は育つんだから寝ちゃえ寝ちゃえ!