『恋愛仮免中』を読んだ

奥田英朗荻原浩原田マハ窪美澄中江有里の恋愛もののアンソロジー
奥田英朗目当てで買って、奥田英朗だけ面白ければそれでいいと思っていたけど、どれも非常に面白かった。最初の考えが非常に失礼だった。


最初の奥田英朗の「あなたが大好き」を読んで、最終ページで自然と笑顔になり、その後の「銀紙色のアンタレス」で遠い昔を思い出すように胸が切なくなり、そして続く「アポロ11号はまだ飛んでいるか」で泣きそうになった。
前半のこの3つでもうこのアンソロジーに虜になった。「アポロ11号はまた飛んでいるか」は、過去と今が交互に書かれる形と、”両者”の”記憶”が絶妙で、結末がわかっているのに、変わりそうにはないのに明るい未来を求めてしまった。


前半だけでもう胸がいっぱいだったのに、後半も素晴らしい。「ドライビング・ミス・アンジー」はテンポの良さ、目に浮かぶような京都の書き方、そして主人公の過去と今を一人の女性(と娘)を入れることで美しく描く文章力……極上の物語を味わうことができた。
最後は淡い思いと喪失感の残る「シャンプー」でアンソロジーは幕を閉じる。あー面白かった!


アンソロジーいいかも、と見直すきっかけになる一冊だった。小説ってやっぱり面白いなあ。