『子殺し』を読んだ

98年から約10年続いた新日本迷走の内幕を書いたノンフィクションもの。
著者が週刊ゴングの元編集長のゴング金沢、GKだけあって新日本よりの提灯記事かと思ったら違った。こういうのを求めていた!小銭稼ぎの暴露本や愚痴を書いた本なんてはっきり言って読みたくない。
なぜあれだけ大仁田劇場ともいえる大仁田−新日本が続きそして途中途切れた時もあったのか、99年1・4闘強導夢で小川vs橋本の惨事は
なぜ起きたのか、その後なぜ橋本は解雇されゼロワンを立ち上げたのか、2000年の始まりにあった総合格闘技のプロレス喰いの背景、それらがゴングの取材からわかったこと、そしてGK独自の選手との会話からわかったことを元に克明に書かれている。
見ている側からも明らかに瞑想した新日本だった。なんであんなことすんだよ、と思うことが多かったが、この本を読んでそういうことだったのかと理解できた。ミルコ、ヒョードルと総合で戦った永田を見た当時はなんでこんなに準備もせず出てくるんだ、と憤りを覚えていたが、その事情を知ると永田も迷走の濁流に飲まれた被害者だったんだな、と思える。
題名の「子殺し」の”親”はもちろんアントニオ猪木。引退後数々の介入をして、見ていて本当に猪木が邪魔に思えた。間違いなく迷走の原因を作ったのは猪木だったと思う。プロレスラーは誰もがトップを張りたいと思っているが、猪木は引退後までそれが続いていた。功績は偉大だが、引退後引くことがなかったのが残念でしょうがない。
こういう作品をもっと読みたい。選手への敬意を表して書いた作品だと思った。人間の感情が全て剥き出しになるプロレスの面白さを活字で実感した。

子殺し 猪木と新日本プロレスの10年戦争

子殺し 猪木と新日本プロレスの10年戦争