『前巷説百物語』を読んだ

「奴は御行乞食でござい」と名乗り「御行奉為」と鈴を鳴らす又市がいかにして御行になったかという、御行以前の又市の姿が書かれている。
御行になる前の又市だから仕掛けを作ることはできず、主に助(す)けられて損料屋としてやっている。話の中で小右衛門や祇右衛門といった百物語シリーズに出てくる人物などが書かれていて、ああこれがこの後の話につながるのかと思いながら読めた。
単行本で6つの話で700ページ強と分厚いが長いとは思わなかった。なんといっても最後の「旧鼠」がよかった。それまでの全ての話のまとめのようになっていて、劇的な展開の数々と大仕掛け、そしてその中には深い悲しみがあった。
とにかくめちゃくちゃ面白い。百物語シリーズの中で「前」となっているからこれから順に読んでもいいけれど、「巷説」「続巷説」「後巷説」を読んでから「前巷説」を読んだほうが絶対に面白い。それらを読んでから「前」を読むと又市という人物がより深くわかる。シリーズ全て読むのは量が多くて大変かもしれないけれど絶対に面白いので読んで損なしだと思う。

前巷説百物語 (怪BOOKS)

前巷説百物語 (怪BOOKS)