健耕病読

週末ただ布団の上で回復のため寝ている間に、前に買ったまま読んでいなかったマンガ『男の操』と『自虐の詩』を読んだ。
どちらも業田作品。『男の操』は本屋で見かけ久しぶりに業田作品を読みたいと思い購入。その勢いで高校の頃読んだ『自虐の詩』を思い出し古本屋に行き購入。この度両方を読んだ。
『男の操』は売れない演歌歌手とその娘を中心とした話。事務所社長やアパートの隣人、たもっちゃんやビデオでしか出ない亡き妻など周囲の人も非常によく描かれていて、その人たちのエピソードも絡んでくる展開がいい。前半はただの脇役なのに後半になるにつれ存在感を増してくる。下巻では急に展開は変わり、お笑い系からややシリアスになる。上巻からは想像もつかない感じになる。紅白に出られるのか、将来はどうなるのかなどが一歩一歩進んでいき、そこからさらに強烈な展開が待っている。これには驚いた。上巻のお笑い系の話も下巻に活きてくるので、上巻で笑った部分が下巻のぐっとくる部分にかかる。この話全体を通じて「男の操」を感じさせる。読んで損なし。
自虐の詩』は高校の頃従兄弟からいっぱいもらったマンガ段ボールパックの中に入っていて、他の読みたかったマンガを読んでから知らない人のマンガだけど読んでみるかと思い読んだマンガ。泣いた。ラストで泣いた。最初はただの4コマだと思い読んでいた。事実そうで、仕事をしないイサオとそんなダメ野郎が好きで一生懸命働き支える幸江。そこのお隣さんや仕事先のマスター、幸江の父などが出てくる。最初から基本的に幸江が幸薄さ全開でイサオは飲むか喧嘩かちゃぶ台をひっくり返すという4コマ。そんな4コマがずっと続いていくので、当時はギャグマンガだと思って読んでいた。下巻もそんな感じで、最後までこんな感じかなと思ったら現在のあることと過去のある事件が描かれてから劇的に展開は変わる。現在と過去が交互に出てくる中で話は深みを見せ素晴らしいラストに向かう。イサオも少しだけ、少しずつ変わっていく。そんな激動の後半の中で特に中学時代の熊本さんがいい。熊本さんの本当の面が見えてきてから胸に熱いものがこみ上げてきて、ラストはボロ泣きだった。失礼かもしれないが、まさかあの絵と4コマという形式で泣くとは思わなかった。イサオと幸江以外の人物の生活もきちんと描かれていて、壮大な人間物語になっている。高校の頃読んで衝撃を受けた。今また読み返してみると、あの頃より人生経験が増えた分、当時ぐっときた場面以外にも新たにぐっとくる場面が増えていた。なんて深く人の気持ちを書けているのだろうと思った。改めて素晴らしい、名作だと思った。『自虐の詩』は秋に映画化されるらしい。あの絵、あの4コマ、あの感動をどうやって実写で表現できるのかは非常に興味がある。

男の操 (上) (BIG COMICS SPECIAL)

男の操 (上) (BIG COMICS SPECIAL)

男の操 下 (2)

男の操 下 (2)


自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

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