だから嫌だ

今日でバイトが最後だった。終わってほしくないと思っていても時間が来れば終わる。
最後の作業を終えてお世話になったおばちゃんたちに挨拶しようとすると逆におばちゃんたちのほうから来てくれた。驚いた。
今までお世話になりました、ありがとうございましたと言おうとしたらおばちゃんたちのほうから今までどうもありがとうね、と言われた。ありがとうなんて言わなくていいのに、こっちのほうがいっぱいいっぱい言いたいのに。
今まで一緒にいたから、そして今後のお祝いということでプレゼントを貰った。さらに別に祝儀袋に入った餞別までもらった。「餞別あげたの今までのバイトの子で初めてよぉ」と言われた。自分では何もしていないのに初めてだなんて。物を貰ったということよりもそういう風に私のことを思っていてくれたということが嬉しかった。バイトの付き合いを超えた関係を持てたことが嬉しかった。
更衣室に帰って一人になったときに、バカで泣き虫だからちょっと泣いた。
今までの当たり前のことが明日からはもうない。もう一緒に働くことはない。さみしい。でもまた会えるしすぐいなくなるわけじゃない。もちろんまた会いに行く。おばちゃんたちにこれだけよくしてもらったんだからこの先も頑張っていきたい。自分一人で生きているわけじゃないという当たり前のことを再認識した。近くにいる人、遠くにいる人みんなからこうやって支えてもらっている。だから頑張れる。「頑張れ」という言葉が強制的だったり投げやりに聞こえるから嫌だという話をよく聞く。でもこれだけ力が出て持続力のあるぴったりな言葉もないと思う。今は「頑張れ」と言われたら「頑張る」と言える。おばちゃんたちに「頑張って」と言われたことは今後も力になっていく。
家に帰ってプレゼント開けてみるとその中に手紙が入っていた。普段は言い方は悪いけれどがさつな言葉遣いで豪快に笑顔を振りまくおばちゃんが書いた手紙はとても丁寧な字で、綺麗な文章で書かれていた。その文字を目で追って、その内容が入ってきたとき、もう一回泣いた。
人と出会うと別れるときが必ず来る。こんなさみしい思いをしてしまう。だから嫌だ。だから人に出会いたくない。でもその中で素晴らしい経験や思いを得ることもできる。でも、さみしい。
おばちゃんたち、ありがとね。