駄文

秋に実家に帰るのは一人暮らしを始めてから初めてかもしれない。
地元の秋の空気の匂いを嗅いだら一瞬で昔に帰れた。
高校の頃チャリをこいで帰ったあの光景が確かに見えた。毎日通る通学路で毎日少しずつ田んぼの色や背丈が変わっていた。
秋が好きだ。一年で一番好きな季節だ。
自分に一番合う季節。興奮と期待感溢れる夏と、じっと耐え心までも縮こまる冬という非常に対照的な二つの季節に挟まれて、落ち着きと切なさと優しさに包まれている秋が好きだ。景色や行事をみても春より秋のほうがずっと日本らしいと思う。
そんな秋にわずかだけど自分の故郷にいられることをとても幸せに感じる。外も家の中もあの頃の秋の匂いがする。
最近の忙しさからかけ離れた世界がある。普段は出不精だけど、旅に出たいと思う人の気持ちが少しだけわかる気がする。
今ここで呼吸をしているだけで疲れが取れる。一週間くらいいたいけどそれはあまりにも贅沢な願いだ。
相変わらず親父はよく食いよく飲み早くに寝る。
相変わらずおふくろはご飯の後のお茶飲みとお菓子をしている。
変わっていない。変わらないでほしい。いつまでもこのままがいい。
依存したい。誰かに寄りかかりたい。一人の生活が楽しいからこそ逆が猛烈に恋しくなるときがある。
ルーツはここにある。帰るべき場所はここにある。
秋が好きだ。家族が好きだ。故郷が好きだ。