『鉄鼠の檻』を読んだ

深夜に読了。
厚い!1341ページ。通常の文庫版を読んだけど、分冊文庫版だと4冊。長かった。でも読むのが止められない。
もう京極堂シリーズに憑かれている。読んでいくことが憑物落としになる気がするから夢中になって読んだ。
タイトルの『鉄鼠の檻』は今までの作品同様ぴったり。鉄鼠、そして檻。どちらも今回の世界にしっかりとはりついている。
そして坊主。
前作が「骨」なら今回は「坊主」。坊主、坊主、坊主・・・
とにかく坊主。舞台が謎の寺だけあって当然といえば当然だけど、とにかく坊主が出てくる。
木場は今回登場しないものの京極堂の妹中禅寺敦子、探偵榎木津、記者の鳥口といったお馴染みのメンバーに加え、
姑獲鳥の夏』に登場した久遠寺医院の久遠寺翁も登場。一作目からの繋がりが強く感じられる。
誰も知らない謎の寺。次々に恐ろしい姿で殺される僧。山の中に現れる、13年前の火事で消えたとされる同じ振袖姿の「成長しない」女の子。
これだけあればもう途中で止められるわけがない。貪るように読んだ。
1300ページを超える作品だが、真相はラストの50ページまでわからない。1000ページを超えても謎は深まるばかりで、さらに殺人事件が起こる。これには完全に参った。読んでいるこっちも完全に檻の中に閉じ込められた。
四作目にして初めて「犯人」という言葉がぴったりきた。読んでいる途中は「これは犯人がいなきゃおかしい」と思うけど、読了すると単なる犯人という言葉で括ることができない気がした。
文庫の裏の内容説明文「さしもの京極堂が苦闘する」と書いてあるとおり京極堂がいつも以上に重い腰を上げない。思案に暮れる。そしてなかなか憑物落としをしようとしない。
結末に待つのは犯人探しでも謎の解決でもない。ここまで長文読んで「知らなければよかった」と思うほどラストは重い。真相を知ったことで結界は解けたけど檻から抜けきれた気はしない。
詳しい説明がないまま最後の展開になると消化不良と不満に溢れて終わっていたと思うが、途中京極堂が禅について関口に話すくだりや、途中途中に僧や京極堂から話される言葉によってそれが納得に変わるのは非常にうまいと思った。
禅をほとんど知らない私でも読み進めていくうちに歴史や考えがなんとなくわかっていく。宗教や悟りといった現代人からは遠い世界のものが自然と染み込んでいく。これらがわからないと何がなんだかという感じで終わってしまうけど、しっかりとした説明があるおかげで深く読めるし伝わってくる。
文字で伝えたり悟るものではない禅を、何も知らない読者にも伝わるよう文字で表現した京極夏彦と憑物落としをした京極堂。やられた。さらに解説も宗教に無知な私にとっては素晴らしかった。
まだ京極堂シリーズ第四弾。全て読むまで憑物は落ちそうにない。今家にあるのはここまでだからとりあえずここでストップ。


あと東司での事件の描写のところで『犬神家の一族』の佐清ポーズが浮かんだ。これは私が『犬神家の一族』が好きだから勝手に浮かんだんだのでしょう。そういえば『狂骨の夢』の保管されている手形で本物か照合の場面でも佐清の手形照合の場面が浮かんだ。
こりゃ『犬神家の一族』が好きというより佐清が好きなだけか。


文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)