『弥勒の掌』を読んだ

騙された!
292ページとページ数は少ないがその中に失踪、殺人、捜査、謎の宗教団体と謎となる要素がぎっしり詰まっている。
騙されないぞ、騙されないぞと思って慎重に読んでいたが帯にあるとおり284ページで衝撃を受け、騙された。う〜ん、騙された。「救いの御手」のほうは胡散くさすぎるからミスリードかなと思っていたけど違ったし騙されまくった。主要人物についてはそれぞれしっかりとその人物主観で書かれているので騙しようがないと思っていたけれど、やられた。
終わり方も普通の終わり方ではなく、最後まで読んで本当の恐怖が伝わる。ぞっとした。最後まで読んで『弥勒の掌』というタイトルがぴったりだと感じた。
我孫子作品で一番といえば『殺戮にいたる病』。「読み終わった瞬間に最初から読み返す小説ランキング」というものがあればまず間違いなく一位になる傑作。あの衝撃は今でも覚えている。本作は『殺戮にいたる病』を超えることはなかったが(そもそもあれを超えるというのが難しすぎると思うが)、それでも衝撃度は高い。騙されないぞと思っていたのに結局騙された。文字だからできたこの衝撃。うまい。

弥勒の掌 (文春文庫)

弥勒の掌 (文春文庫)