『峠うどん物語(下)』を読んだ

「上」を読んだ時から「下」が待ち遠しかった。おじいちゃん発お父さん経由の頑固さと、おばあちゃん譲りの好奇心を持ったよっちゃん、肯定は無言で否定だけぶつりと話す職人のおじいちゃん、余計なことでも聞かずにはいられない感情で動くおばあちゃん、おじいちゃんと正反対の性格のように見えて根っこは一緒のお父さん、物分かりがいいようで実は一番厳しいお母さん、みんなしっかりと書かれているから現実にそんな家族がいるように見えた。
市営斎場の真向かいにあるうどん屋さん。そこに来るお客さんやおじいちゃんおばあちゃんに関係する人たちのお話が心を打つ。綺麗事はわかっているけれど割り切れない、なあなあでやることもできるけれどそうはいかない、客観的にみたらすぐに決断できるのに主観となればそうはいかない、そんな生きていたら必ず経験する難しさがある。おじいちゃんはめったに話さないけれど、うどんを一生懸命作っている姿だけでわかる。
今こそ「柿八年」なのかもしれないけれど、「立春大吉」が一番あたたかく残った。おじいちゃんのぼそっと言った意地と自信と矜持の言葉に胸が熱くなった。
「上」が感情の激しさだとしたら「下」は感情の静けさだった。上下読んでなんだか少し新しいことがわかった気がした。

峠うどん物語(下)

峠うどん物語(下)